最近購入した本(2022年6月)

伊藤亜紗 2022 『体はゆく—— できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』、文藝春秋。

 身体というものを、自分の意識では制御しきれず、場合によっては「意識しないうちにできてしまう」もの、言わば意識よりも先走るものとしてとらえ、そのポテンシャルを先端技術を使って引き出す事例を紹介していく。人間にとって外在的なテクノロジーでそれまでの人間を上回っていくのではなく、身体とテクノロジーの共同作業によって上手くやっていこうというスタンスが一貫している。プランどおりに実行できることではなく、それぞれの環境に適合していくことを重視している点で、状況的行為論に通じる考え方も端々で見受けられる。

アーヴィング・ゴフマン 2023 (1959) 『日常生活における自己呈示』、筑摩書房

 インタラクションの話をしょっちゅうしているくせに旧訳を持っていなかったのでありがたい。

今井むつみ秋田喜美 2023 『言語の本質 —— ことばはどう生まれ、進化したか』中央公論新社

 大仰なタイトルだが、アプローチとしては「記号の接地問題」「アブダクション推論」を主なキーワードとして言語の発達をとらえようとしている。個人的には、言語を五感や身体感覚と相互に作用するマルチモダリティという点からとらえることに関心がある。これは例えば、人が音楽というものを(概念というより感覚にもとづいて)どのようなものだと思っているか、といった話とも繋がってくる。

ガイ・ドイッチャー 2022 (2010) 『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』、早川書房。

 上記『言語の本質』の著者が解説を書いていたのでついでに購入。サピア−ウォーフ仮説を今どのように引き合いに出せば良いかを考える上で参考になりそう。

西田洋平 2023 『人間非機械論 —— サイバネティクスが開く未来』、講談社。

 ここしばらく「制御」という概念の来歴が気になっており、うろうろとサイバネティクスに辿り着いてたまさにそのタイミングで刊行された。初期サイバネティクスからオートポイエーシスに至る流れが図式的にしっかり描かれていて呑み込みやすい(それでも「観察」についてはまだ分かり足りないが)。この流れにおけるベイトソンの重要性とか、副次的に見通しを与えてくれる話もいくつかあった。

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